日本は高齢化社会に突入しており、今後、自宅で亡くなる高齢者が増えると予測されています。
特に、地域に住む高齢者に対して、終末期に訪問看護サービスを適切に提供することが課題となっています。本研究では、終末期の高齢者が訪問看護サービスを利用する状況や、どのような利用パターン(利用有無・開始時期・継続性)が医療・介護費用の低減に寄与するかを調べました。
研究デザインは過去のデータをもとに分析する後ろ向き(レトロスペクティブ)コホート研究です。
静岡県33の市町から、2016年9月から2018年9月の間に亡くなった75歳以上の高齢者2万2927人のデータを分析対象としました。
後期高齢者医療保険、介護保険、訪問看護療養費の請求データを用いて、死亡前半年間の訪問看護サービスの利用状況に応じて5つのグループに分けました。
- 早期にサービスを開始し、継続して利用していたグループ
- 早期に開始したが、一時的に中断したり中止していたグループ
- 早期には開始しなかったが、継続して利用していたグループ
- 早期には開始せず、一時的に利用していたグループ
- サービスを利用していなかったグループ
その後、訪問看護サービスの利用パターンと、死亡前3か月間にかかる総費用との関係を統計的に分析しました。
結果・考察
対象者の年齢の中央値は85歳で、53.3%が男性でした。死亡前の半年間に23.7%(5424人)が訪問看護サービスを利用していました。統計分析の結果、75歳以上の高齢者が終末期を自宅で過ごす際、訪問看護サービスを早めに利用することで、死亡前3か月間の費用を抑える効果が期待できる可能性が示されました。