身体機能の軌跡(Physical Function Trajectory: PFT)は死亡率や入院リスクと関連しており、施設入居時から、入居者の身体機能の軌跡を予想しながら介入することが重要です。
そこで本研究では、日本の特定施設に新たに入所した身体機能の高い高齢者を対象に、施設入所後6ヵ月間のPFTを同定し、それぞれの特徴を検討することを目的としました。
本研究は、後向き多施設研究であり、日本の47の特定施設に新たに入所した身体機能の高い高齢者(Barthel index>60)をエントリーとしました。データ収集期間は、2021年1月1日~2022年1月31日で、特定施設入居者の身体機能等をモニタリングするLong-Term Care Information System for Evidence(LIFE)からデータを収集しました。統計解析は、Group-Based Trajectory Modelと二項ロジスティック回帰分析を用いました。
結果・考察
対象者は718人であり、平均年齢は85.69歳で、64.5%が女性でした。PFTは4群に分類されました。
- 維持群(66.0%)
- 改善群(9.5%)
- 微低下群(16.6%)
- 大低下郡(7.9%)
改善群では、維持群と比較して、日常的な活動に関心がないと回答した入所者が有意に少ない傾向がありました(オッズ比(OR)0.45;95%信頼区間(CI)0.21-0.97)。また、大低下群は、維持群と比較して、入所時のBMIが低い入所者(OR 2.42;95%信頼区間1.29-4.55)と義歯を使用していない入所者(OR 0.49;95%信頼区間0.26-0.95)が有意に多いことが示されました。
将来のPFTを考慮することは、ケアプランの作成や適切な介入の提供に役立つ可能性があります。
さらに、既存のデータを活用することで、入居者自身やスタッフに負担をかけることなく、入居者の身体的自立を維持し、ケアの質を高めることができる可能性があります。